新常用和漢薬集
名称 |
ブシ
第十八改正日本薬局方 収載
|
||
英名 | Processed Aconite Root | 生薬ラテン名 | ACONITI RADIX PROCESSA |
生薬名:ブシ |
植物名:ハナトリカブト,オクトリカブト |
||
基原 |
ハナトリカブト Aconitum carmichaeli Debeaux又はオクトリカブト Aconitum japonicum Thunberg (Ranunculaceae キンポウゲ科)の塊根を1,2又は3の加工法により製したもの 1,2及び3の加工法により製したものを,それぞれブシ1,ブシ2,ブシ3とする ブシ1,ブシ2及びブシ3は定量するとき,換算した生薬の乾燥物に対し,それぞれ総アルカロイド[ベンゾイルアコニチン(C32H45NO10:603.70)として] 0.7 ~ 1.5%,0.1 ~ 0.6%及び0.5 ~ 0.9%を含む その加工法を表示する |
||
調製 |
秋に地下部を掘り起こし,土砂,地上部などを除き,母根及び子根を収穫し,塊根を乾燥する.この塊根について,次のいずれかの方法により減毒加工する. ブシ1:高圧蒸気処理により加工する. ブシ2:食塩,岩塩又は塩化カルシウム水溶液に浸せきした後,加熱又は高圧蒸気処理により加工する. ブシ3:食塩の水溶液に浸せきした後,水酸化カルシウムを塗布することにより加工する. |
||
産地 | 日本(北海道,岩手・群馬県など),中国(四川省など). | ||
性状 |
1)ブシ1 径10 mm以下の不整な多角形に破砕されている.外面は暗灰褐色 ~ 黒褐色を呈する.質は堅く,切面は平らで,淡褐色 ~ 暗褐色を呈し,通常角質で光沢がある. 弱い特異なにおいがある. 2)ブシ2 ほぼ倒円錐形で,長さ15 ~ 30 mm,径12 ~ 16 mm,又は縦ときに横に切断され,長さ20 ~ 60 mm,幅15 ~ 40 mm,厚さ200 ~ 700 μm,又は径12 mm以下の不整な多角形に破砕されている.外面は淡褐色 ~ 暗褐色又は黄褐色を呈する.質は堅く,通例,しわはなく,切面は平らで,淡褐色 ~ 暗褐色又は黄白色 ~ 淡黄褐色を呈し,通常角質,半透明で光沢がある. 弱い特異なにおいがある. 3)ブシ3 径5 mm以下の不整な多角形に破砕されている.外面は灰褐色を呈する.質は堅く,切面は平らで,淡灰褐色 ~ 灰白色を呈し,光沢がない. 弱い特異なにおいがある. |
||
成分 |
アコニチン系アルカロイド ジエステル型アルカロイド:aconitine(日局18純度), mesaconitine(日局18純度), hypaconitine(日局18純度), jesaconitine(日局18純度) モノステル型アルカロイド:benzoylaconine(日局18定量), benzoylmesaconine(日局18確認), benzoylhypaconine, 14-anisoylaconine その他のアルカロイド:neolin, higenamineなど その他:aconitic acide, aconitan A~D |
||
選品 | 塊根が良く肥大し,質堅く空洞がなく,大きさがそろっているものが良い(原料についての選品である.通例加工ブシは刻み生薬で流通する). | ||
適応 | 新陳代謝機能の極度に減衰したものを回復させ,気をめぐらし冷えを除き,強心・利尿作用があり,麻痺,疼痛を治す. | ||
漢方 処方例 |
麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう),麻黄附子甘草湯(まおうぶしかんぞうとう) 桂芍知母湯(けいしゃくちもとう),桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう),甘草附子湯(かんぞうぶしとう) 四逆湯(しぎゃくとう),茯苓四逆湯(ぶくりょうしぎゃくとう) 八味地黄丸(はちみじおうがん),牛車腎気丸(ごしゃじんきがん),真武湯(しんぶとう) 附子瀉心湯(ぶししゃしんとう),大黄附子湯(だいおうぶしとう) 利膈湯(りかくとう) |
||
貯法 | 密閉容器 | ||
備考 |
現在,日本ではブシ1は,加工附子(かこうぶし),修治附子(しゅうじぶし)などの名称で医療機関に流通しており,ブシ2は炮附子(ほうぶし),またブシ3はブシ(白河ブシ)として,それぞれ刻み生薬として主に流通している. 炮附子の一種として黒附片(こくぶへん),白附片(びゃくぶへん)などの附子類(いずれも中国産)も稀に扱われている. なおわずかであるが,烏頭(うず)〔川烏頭(せんうず)(中国四川省栽培品),草烏頭(そううず)(中国野生品)〕の名称で塊根を乾燥しただけのものがやはり刻み生薬として流通しているが,このものは,性状(切断面)が不透明かつ粉性であるのが特徴であり,減毒加工がほとんどされていないため,薬効だけでなく毒性も極めて強いことから使用はごく限られている. |
||
情報更新日 2022/05/16 |