公益社団法人東京生薬協会公益社団法人東京生薬協会

新常用和漢薬集

名称
カンゾウ (甘草)
第十八改正日本薬局方 収載
英名 Glycyrrhiza 生薬ラテン名 GLYCYRRHIZAE RADIX
カンゾウ
生薬名:カンゾウ

植物名:
基原 Glycyrrhiza uralensis Fischer又は Glycyrrhiza glabra Linné (Leguminosae マメ科)の根及びストロンで,ときには周皮を除いたもの(皮去りカンゾウ)
定量するとき,換算した生薬の乾燥物に対し,グリチルリチン酸(C42H62O16:822.93)2.0%以上を含む
調製 10月頃の落葉時に掘り上げ,芽,小根を除き根とストロンに分け,陽光で乾燥(皮付き)又は乾燥前にコルク層を剥ぐか,刃物で削去(皮去り甘草)する.
産地 中国(内蒙古,新疆ウイグル,寧夏回族自治区,甘粛省),ロシア,アフガニスタン,イラン,パキスタン
性状 ほぼ円柱形を呈し,径0.5 ~ 3.0 cm,長さ1 m以上に及ぶ.外面は暗褐色 ~ 赤褐色で縦じわがあり,しばしば皮目,小芽及び鱗片葉を付ける.周皮を除いたものは外面が淡黄色で繊維性である.横切面では,皮部と木部の境界がほぼ明らかで,放射状の構造を現し,しばしば放射状に裂け目がある.ストロンに基づくものでは髄を認めるが,根に基づくものではこれを認めない.
弱いにおいがあり,味は甘い.
成分 トリテルペン配糖体:glycyrrhizin(glycyrrhetinic acid)(日局18確認,定量), glycyrrhetic acid, glabric acid
フラボノイド類:liquiritin, liquiritin apioside, liquiritigenin, isoliquiritin, licoricidin, glycyrol, formononetin, licoricone
その他:ポリアミンなど
選品 甘味が強く,ほとんど苦味のないものが良い.
適応 滋養・調和・緩和・消炎・去痰作用があり,およそ7割の薬方に配合される.
抗胃潰瘍・肝機能改善作用があり,単味またはカンゾウ成分の製剤として使用される.
その他:グリチルリチン酸の原料.
漢方
処方例

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう),四逆散(しぎゃくさん)
構成生薬のうち,甘草,芍薬の組み合わせにより,筋肉の痙攣による痛み,腹痛に使用される.

桂枝甘草湯(けいしかんぞうとう),炙甘草湯(しゃかんぞうとう)
構成生薬のうち,桂枝,甘草の組み合わせにより,動悸を鎮める働きがある.

大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう),調胃承気湯(ちょういじょうきとう)
構成生薬のうち,大黄,甘草の組み合わせにより,大黄の腸に対する刺激を緩和する.

甘草麻黄湯(かんぞうまおうとう)
構成生薬のうち,甘草,麻黄の組み合わせにより,咳,喘息を緩和する.

桔梗甘草湯(ききょうかんぞうとう),排膿散(はいのうさん)
構成生薬のうち,甘草,桔梗の組み合わせにより,のどの痛み,口内炎,中耳炎,皮膚化膿症を改善する.

人参湯(にんじんとう),甘草瀉心湯(かんぞうしゃしんとう)
構成処方のうち甘草,乾姜,人参の組み合わせにより,体を温め胃の働きを補い,下痢,腹痛を治す.

茯苓甘草湯(ぶくりょうかんぞうとう),酸棗仁湯(さんそうにんとう)
構成生薬のうち,甘草,茯苓の組み合わせにより心気虚を補う.

貯法 密閉容器
備考 Glycyrrhiza uralensis を基原とするものを東北甘草(別名:ウラルカンゾウ)と称し,西北甘草Glycyrrhiza glabraの一部も基原としている.
G. glabra には変種が多く,スペイン甘草 var. typical,ロシア甘草 var. glandulifera,ペルシャ甘草var. violacea,var. pallida などがある.
また,G. inflata を基原とする新疆甘草(公定書外)はグリチルリチン酸の製造原料として輸入されている.
多量の服用で浮腫,高血圧,低カリウム血症,偽アルドステロン症など起きることがあり,使用にあたっては充分な注意が必要である.
甘草は生薬として使用されるだけでなく,医療用医薬品の原料としても用いられている.また,食品の甘味料としての需要が多い.

情報更新日 2022/05/14

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