季節の花(東京都薬用植物園)
ノイバラ
(バラ科)
撮影日 2023-04-29
植物のある場所 有用樹木区・林地
羽状複葉の基部にある托葉は、櫛の歯状に細裂し、日本産の他のバラ原種との区別点になります。
花は直径2-3cmの小輪一重咲きで、10輪から数十輪の円錐花序をなす大房咲きとなり、遠目にも目立ちます。
種小名 multiflora(=たくさんの花)は、この房咲き多花性を表しており、園芸バラのフロリバンダ系やスプレーバラと称される多花性の系統にも、ノイバラのこの形質が受け継がれています。
果実(偽果)はやはり房状に実り、秋に紅色に熟します。この果実は、日本薬局方収載生薬「エイジツ」として利用されます。当協会が栽培指導を継続する自治体においても、国内生産拡大へ向けての試験栽培を行っており、作業性・安全性確保のためトゲの少ない系統を選抜し、栽培しています。
エイジツは瀉下作用を示すため、ハーブ的なローズヒップとしての利用には不向きです。また当園のノイバラは通常のトゲのある系統ですので、観察時にはトゲにご注意ください。
【生薬名】エイジツ(営実)
【薬用部位】偽果または真果(真果は偽果の内部にあります)
【用途】利尿・瀉下作用があり、民間薬として浮腫の解消などに利用
【成分】フラボノイド配糖体(ムルチフロリンAなど)、カロテノイド色素(リコピンなど)
【分布】北海道中南部から九州、朝鮮半島、中国大陸