公益社団法人東京生薬協会公益社団法人東京生薬協会

季節の花(東京都薬用植物園)

シナガワハギ

(マメ科)

 

撮影日 2022-05-23

植物のある場所 製薬原料植物区

ユーラシアに広く分布する越年草で、河原、海沿い、埋立地、造成地などにしばしば群生します。荒れ地を好む特性から帰化植物とみる説もある一方、もともと日本も分布域であったという見解もあってはっきりとしません。和名は、江戸期に東京の品川付近に多く生えていたことによるとされます。
欧米ではハーブや牧草としても知られ、学名(属名)Melilotus と同語源のメリロート、あるいは本種がクマリンの甘い香り(桜餅の香り)をもつことからスイートクローバーとも呼ばれます。
クマリンは、生きて新鮮な植物体内では、香りのない配糖体の形で存在しますが、植物体が傷を受けたり、枯れたりすると配糖体が分解を受け、香りのあるクマリンが遊離します。また元気な植物でも、成長に伴い下葉が枯れたりして、そのような部位からクマリンの香りを発することがあります。
クマリンはカビ等の微生物による植物体の分解の過程で、二量体のジクマロールに変化します。ジクマロールはビタミンKの活性を強く抑制し、脊椎動物における血液凝固阻害作用があります。この作用は1920年代に、カビの生えた本属植物の牧草を食べたウシが出血多量により死亡した事例(スイートクローバー中毒)から見出されました。
このジクマロールを出発物質として、抗凝血薬・抗血栓薬のワルファリン(ワーファリン)warfarinが創薬されました。また本植物のエキスにも抗凝血作用があることから、痔などの薬にも用いられます。
ただし、クマリン類には肝機能を阻害する作用も知られており、薬の使用には医師・薬剤師の指示を守り、メリロートエキス使用の健康食品を多量に摂取する等の行為には注意が必要です。
【用途】抗凝血薬ワルファリン創薬の契機、痔核症状の寛解、食品(ハーブティー他)
【分布】北海道から沖縄、ユーラシア

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