公益社団法人東京生薬協会公益社団法人東京生薬協会

季節の花(東京都薬用植物園)

カンレンボク

(ヌマミズキ科)

 

撮影日 2024-09-15

植物のある場所 有用樹木区(ケシ・アサ試験区奥)

7-8月に白い小さな花序をつけたカンレンボクが、結実しています。通常、頂花序が結実する両性花となり、側花序が雄花序となります。
現在、長さ3cmほどの棒状の果実が球状に集まった果序を観察できます。個々の果実は三角柱状で、ときにやや湾曲し、ミニチュアのバナナを思わせる形状です。色は明るい緑色をしており、晩秋には若干褐変しつつ、あまり色が変わらないまま散り落ちて、種子散布されます。種子からの発芽率は比較的良好です。
多くの果実をつけ、繁殖もしやすいことから、子孫繁栄・喜びの木として、別名をキジュ(喜樹)ともいいます。
この植物がつくる「カンプトテシン」は、DNAのらせんをほどく酵素「DNAトポイソメラーゼ I」の働きを止めて、DNAの複製、ひいては細胞分裂を阻害する性質を持ちます。
その性質を保ちつつ、水への溶解性などを改善した誘導体である「イリノテカン」等が、抗がん剤として実用化されています。
興味深いことに、カンレンボク自身のDNAトポイソメラーゼ Iは、一部のアミノ酸配列が変化してカンプトテシンに影響されない性質を備えており、自分の成分で細胞分裂が支障されないように進化しています。
【別名】キジュ(喜樹)
【薬用部分】果実、根
【用途】植物体からカンプトテシンを単離し、抗がん剤イリノテカンの合成原料とする。
【成分】カンプトテシン、ベノテルビン
【原産地】中国

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